自信を持って開発を進めるための「根拠ある、確かなコンセプト」をつくる
概要
コニカミノルタ株式会社 BIC Japan様(以下BIC)が開発されたニオイ見える化チェッカー「Kunkun body」のデザインコンサルティングを行いました。
近年、ニオイによって周囲に不快感を与える「スメルハラスメント(スメハラ)」が社会課題化しています。しかし人間の嗅覚は自身のニオイには気づきにくいという特徴があり、かつニオイは目に見えず定量化も難しいことから指摘や改善がしづらいという問題があります。それを解決するためBICでは、高感度のニオイセンサーを活用した、ニオイの見える化ソリューションを検討されていました。弊社はそのサービスデザインにあたり、開発に関与する全てのメンバーが同じ方向を向き、あらゆる場面での判断基準となるための根拠あるコンセプトの策定を支援しました。
ポイント
- ニオイにまつわる生活者のエピソードを大量に収集し、ワークショップでリフレーミング
- ターゲットユーザーの価値観に対する理解とその姿の明確化
- 提供すべき価値の検討と、サービスコンセプト原案の立案
- サービスシナリオを用いてのユーザー検証と、それを受けてのコンセプト決定
プロセス
ニオイにまつわるエピソードを大量に収集し、ワークショップでリフレーミング
通常、このようなサービスデザイン案件では、解決すべき課題を知るために生活者インタビュー等の調査から入ることが多いのですが、自分のニオイ(体臭)がテーマになるときの話しにくさ・恥ずかしさを考慮したとき、対面での調査ではニーズの奥底にあるインサイトやその人ならではのコンテクストに辿り着くことは難しいことが予想されました。そこで、一定の匿名性を確保できる自由記述形式のウェブアンケートを活用して、様々な生活者のニオイエピソードを収集したところ、予想を遥かに超える赤裸々なエピソードを大量に集めることができました。それをインプットとしてBICの皆様とKJ法ワークショップを行い、情報を整理したことで、我々プロジェクトメンバーの思考の枠組みは大きく拡張・変化(リフレーム)しました。
ターゲットユーザーの価値観に対する理解とその姿の明確化
事前の定量調査結果と、ニオイエピソードアンケートの分析結果から、このサービスの価値を最も享受するであろうユーザー層が見えてきました。ラッキーなことに、プロジェクトメンバーの多くもその層に属していました。エピソードアンケートで得た定性的なコメントを分析し、その生活実態や価値観を推し量りつつ、自分たちの経験や感覚もふまえて肉付けしていくことで、メインターゲットとなるペルソナとサブペルソナが完成しました。
これで、「誰のためのサービスか(WHO)」が定まったことになります。
提供すべき価値の検討と、サービスコンセプト原案の立案
提供すべき価値の検討と、サービスコンセプト原案の立案ペルソナの特徴や毎日の過ごし方をもとに、彼らが解決したいニオイにまつわる課題、理想とする姿、最も価値を感じること、そのニーズに対してどんな機能を提供すべきか、を再度ワークショップにて検討し、以下のフレームで整理しました。
- なぜ、この新しいビジネスを行うのか(WHY なぜやる)
- ユーザーの課題をどのように解決するのか(HOW どうやる)
- 具体的なサービスとして、なにを提供するのか(WHAT なにをやる)
ここでは3通りのWHY(このうちのひとつが後にコンセプトの核になります)を導きました。そしてそれぞれについて、HOWとWHATが連なります。
サービスシナリオを用いてのユーザー検証と、それを受けてのコンセプト決定
3つの有力なWHY候補のうち、ターゲット層にどれが最も受容される(響く)のか、想定ユーザーを対象として定量的な検証を行いました。採用した手法はシナリオ共感度調査です。まだ世の中に無いサービスでも、物語形式の「シナリオ」で表現することにより、一般の方でもサービス像やその機能を具体的にイメージすることが可能になります。このシナリオ共感度調査の結果から、ターゲット層に最も共感されるWHYを明らかにし、それを軸にサービスコンセプトとして明文化しました。
このようにコンセプト原案の段階で受容性を確認できたことで、コンセプトの確かさについてBICの皆様をはじめとするプロジェクトメンバー全員が自信をもつことができました。そしてそのコンセプトはその後の要件検討、UIおよびハードウェアのデザイン、開発に至るまで、様々な場面での判断基準となりえています。
- クライアント名
- コニカミノルタ株式会社 BIC Japan
- メンバー
- 原田養正、森瑞穂
- タグ
- プロジェクト