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近未来の航空機キャビンおよび内装品デザインのための
ユーザー調査

多彩なデザインメソッドを駆使して、機内エクスペリエンスからキャビンと内装品のデザインを発想する

概要

航空機内装品のグローバルサプライヤーである株式会社ジャムコ様(以下ジャムコ)が、近未来の航空機キャビンデザインのプロジェクトに参加されるにあたって、弊社を協業パートナーに選定いただき、3年間にわたり各種デザインメソッドを用いて活動を支援しました。

ポイント

  • 機内エクスペリエンスの理解とカスタマージャーニーマップの作成
  • 航空機の乗客のサイコグラフィックなセグメンテーション
  • 機内エスノグラフィック調査と新キャビンデザインコンセプトの導出
  • 内装品デザインワークショップのファシリテーション
  • 内装品プロトタイプのUXデザイン評価

プロセス

機内エクスペリエンスの理解とカスタマージャーニーマップの作成

まず、未来の航空機キャビンが現在どのように構想されているか、デスクリサーチと映画法で把握しました。映画法はSFプロトタイピングとも呼ばれ、未来を描いたSF映画から、新しい機器や乗り物・新しい方式のインタラクション・未来の生活などについて、インスピレーションを得るデザインメソッドです。このメソッドでは、優れたクリエイターの想像力によって、最新技術がどのように登場人物の生活に「とりあえず動く形で」(=プロトタイピング)具現化されたかに着目します。
続いて、現在の航空機キャビンで乗客がどのような体験をしているのかを知るためにインタビューを行い、フライトの搭乗から降機までのカスタマージャーニーマップを作成しました。
これらの手法によって、航空産業のデザイントレンドと航空機キャビンに対するユーザー要求を大まかに把握できました。

搭乗体験の流れ(カスタマージャーニーマップ)。搭乗体験の各フェーズでの感情の移り変わりをポジティブ/ネガティブの軸で示した。

ジャーニーマップの1フェーズ「座って過ごす」を深掘りした図。このフェーズにおける価値を2軸にマッピングした。

航空機の乗客のサイコグラフィックなセグメンテーション

インタビューの時点で、航空機の乗客にはさまざまなタイプがいることは分かっていました。例えば一人の出張利用と、家族・友人との旅行利用では、ユーザー要求が異なると考えられます。そこで、弊社独自のユーザーセグメンテーション手法「人とモノ・コトの関わりかた尺度」により、機内での過ごしかたや快適性の追求に関する考えかた・態度・価値観にもとづいて、航空機の乗客を7タイプに定量的に分類しました。
この手法では、対象物と関わるさまざまなシーンでの行動や感情を記述した約100個の文について、自分への当てはまり度合いを答えてもらうアンケートを実施し、回答データを統計処理(因子分析・クラスター分析)することにより、従来マーケットリサーチでは主にデモグラフィックな属性にもとづいていたセグメンテーションを、「対象物のユーザー」としての考えかた・態度・価値観によってセグメンテーションすることが可能になります。
本プロジェクトでは、「機内で自分なりの快適な過ごしかたを追求しているリードユーザー」を新キャビンのターゲットユーザーに想定し、7つの乗客タイプのうち2タイプ(①機内でできることは限られていると割り切りつつ、可能な範囲で最大限の快適さを実現するタイプG2と、②シート周りにいろいろな私物を持ち込んで、自分にとってなるべく快適なプライベート空間を作り上げるタイプG6)を選定しました。

グループ2ユーザー「飛行機に乗り慣れた達観派」。飛行機に不満を感じていないビジネスクラス利用者が多く、全体的に関与が低い。

「人とモノ・コトの関わり方尺度」により定量的に導かれた7グループのうち、グループ2に属するユーザーの特徴

グループ6ユーザー「自らの快適のために少しでも良くしたい派」。7グループの中で機内エンタメを楽しむ傾向。機内サービス等に対する要求も高い。

「人とモノ・コトの関わり方尺度」により定量的に導かれた7グループのうち、グループ6に属するユーザーの特徴

機内エスノグラフィック調査と新キャビンデザインコンセプトの導出

上記2タイプを代表するユーザーに、実際にマカオ往復便に搭乗してもらい(片道約5時間)、機内行動の観察と簡易インタビューを行いました。
この機内エスノグラフィック調査で、これまでに分析していたカスタマージャーニーマップとユーザー要求、乗客タイプの特性について重点的に観察・分析することにより、ターゲットユーザー像を統合的に理解でき、新キャビンのコンセプトを導き出すことができました。

機内エスノグラフィック調査における、モニターの観察結果。搭乗から離陸までの機内での行動をつぶさに観察した。

機内エスノグラフィック調査における記録

リードユーザーであるG6の特徴を、行動・思考の特性、基本的な価値観、飛行機に対するユーザー要求の大きく3つにわけて整理したもの。

リードユーザーであるG6の特徴

内装品デザインワークショップのファシリテーション

航空機内装品(シートなど)については、ジャムコと弊社のメンバーでワークショップを繰り返し、ユーザーへの価値提供ポイントをどのように実現できるか、ジャムコの内装品開発の知見を引き出しながら議論を深め、新キャビンのコンセプトにもとづくデザインを固めていきました。

UXデザイン評価の様子

内装品プロトタイプのUXデザイン評価

新キャビンのコンセプトから内装品に求められる要件と、各要件の重要度を改めて整理し、ジャムコが作成した内装品プロトタイプをUXデザインの観点から評価しました。評価結果は、内装品のデザインを改善するのに役立てられました。

UXデザイン評価結果の一覧表

評価結果の一覧表

このように、一度でデザインを完成させようとするのではなく、多様な手法を用いてデザインプロセスをスパイラルアップすることにより、航空機産業の幅広いステークホルダー(乗客・航空会社・内装品メーカー・機体メーカー)の要求に適うキャビンコンセプトと内装品のデザインを導き出すことができました。

クライアント名
株式会社ジャムコ
メンバー
有賀義之、植田美和子、金子真弓、木村達郎、佐々木工、田中美帆、山中佑也
タグ
プロジェクト

PAGETOP

生活者視点のデザインコンサルティングパートナー 株式会社U'eyes Design(ユー・アイズ・デザイン)

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